五十肩は突然に・・・と誰もが思うほどですが、6月中頃に私の携帯電話に母からのメールが入っていました戸軽です。中を見たところ次のような内容でした。

「夜中に寝ていたら突然肩に激痛が走り、寝られなくなりました。何かいい方法は無いですか?」と・・・

時刻を見たら夜中の3時・・・私寝てますって・・・おそらくは五十肩ではないかと思ったら、事態はもう少し深刻でした。

五十肩と間違いやすい腱板損傷とは?

70代の母が今回、腱板損傷の中でも特に重度の『腱板断裂』になってしまいました。始めは使い過ぎによる五十肩あたりだろうと思っていましたが、MRIで詳しく調べたら、肩の関節の筋肉の腱が切れていることで、腕が上がらなくなっているとの事でした。

五十肩をはじめとする肩関節周囲炎の主な原因は

1.同じ動作を繰り返し行う労作性によるもの

2.一度に自身の筋力を超えるほどの、大きな力が使われる事

が大きな原因で、今回のケースでは肩甲骨の表面についている2つの筋肉

・棘上筋(きょくじょうきん)
・棘下筋(きょくかきん)

が部分断裂していて、肩甲骨の裏面についている筋肉

・肩甲下筋(けんこうかきん)

が完全断裂していました。

画像参照:京都下鴨病院

症状的には凍結肩(フローズンショルダー)という五十肩の症状によく似ていましたが、次のような違いがあります。

① 自ら腕を上げなければ、肩関節に痛みが出ない。
② 前屈して、腕をぶら下げたまま体を起こすと、腕が痛みなく上がっている。

フローズンショルダーや石灰沈着による関節の痛みでは

『何もしていなくても痛くて動かせない』

ので、初期段階で別の手段で腕が上がる状態や、痛みが無いのが大きな違いです。

日常生活では、ある程度支障はあるものの、部分断裂している2つの筋肉の回復を待ってから完全断裂の手術を考えていました。高齢のため、関節拘縮や筋肉の拘縮が起こる心配と、部分断裂した腱板の回復がいまいち進んでいなかったので、手術の日程が組まれました。

 

『関節鏡視下』による【腱板再建術】

手術説明書を見たら『腱板断裂』と書かれていて『関節鏡視下』で行うと書かれていました。

『腱板』とは

筋肉と骨をつないでいる組織を腱(けん)と言います(アキレス腱が代表的)が、肩関節で使われている腱は構造的に薄い板状となって腕の骨についています。
そのために他の腱より弱く、使用頻度も高いことから痛めやすいのです。

『関節鏡視下』とは

『関節鏡視下』は『内視鏡』とも言い、肩関節の前後に『カニューラ』という筒を差し込んで、関節鏡というカメラを片側から入れて反対側から器具を入れて、関節内を広くモニターで見ながら手術をしていきます。

画像参照:整形外科医「森大祐」

この方法は切開する手術よりも

・体を大きく切る事が無いので、傷跡が小さく目立たない。
・筋肉の細い人や体力の低い方でも受けやすい。
・手術後の感染症のリスクが小さい。

といったメリットがあります。

 

『腱板再建術』とは

最もポピュラーな術式で、一般的に関節鏡̪視下行われる腱板再建術は次のように行われます。

画像参照:ナースフル

1.アンカーと呼ばれる糸付きのネジを腕の骨に取り付けます。

2.糸で腱板を出来るだけ伸ばして腕の骨に縫い付けていきます。

3.その糸を別のアンカーで腕の骨に打ち付けて固定します。

この様な要領で断裂した腱板を修復していきます。

 

外転装具でリハビリ

手術後、母は少し大掛かりな装具を着けられた状態で病室に運ばれていきました。

この装具は、三角巾の様に腕を吊っておくタイプですが、腕と体の間にウレタン製のブロック状のパッドが付いていることで、肩周りの筋肉の緊張を緩める役割があると思われます。

また手にはテニスボール大の弾力性のあるボールがあり、すぐに指の運動が出来るようになっています。

画像参照:弘前大学大学院医学研究科

頚肩にかかる紐は2本出ていて両側にかけて負担を軽減する役割があると思われます。

かなり仰々しい感じもしますが、メッシュ素材で通気性も良いので、再建した腱や傷口が落ち着くまで約3週間は装着するようになります。

 

抜糸から完治まで

手術後の経過がよければ、1週間ほどで抜糸が出来ると言っていました。

抜糸が出来ても、腕が挙げられるわけではありませんので、お風呂の問題が出てきます。まずはシャワーをどのように浴びればよいか訓練が始まり、その後も経過観察しながら後10日ほど過ごして退院となります。

退院後は週1回の診察の後、リハビリテーションで背筋の硬結をほぐす施術を受けることになります。

装具が外れたら

【可動域制限】と言って『動いて良い範囲』が限られてしまいますが、経過が良好でしたら徐々に範囲が広がっていきます。

3カ月程で重いものを持ったり、力が入るようなこと以外の、ほとんどの日常生活は普通に出来るようになるそうで、

6ヶ月経過したら、重いものを持つことが出来るようになり、完治は1年との予想になっています。

 

腱板を傷めないための予防法

腱板損傷は主に使いすぎたり、加齢によって誰にでも起こります。そこで簡単な予防法をあげておきます。

1、万歳をして伸びをしましょう。

2、手を頭の後ろに組んだまま、肘を後ろに引きましょう。

3、腕を下ろしててを後ろで組んで伸ばしましょう。

この3つの動作で腱板損傷を起こす筋肉が緩みます。

・ 毎朝起きた時に

・同じ姿勢が長く続いた時

・集中して作業していた時など

筋肉疲労の解消にもつながりますので、習慣にしてくと良いでしょう。

一時期、ハンディマッサージ機を本来とは異なる使い方でケガをすることが話題になりましたが、今回の母の損傷も原因の一端を担いますので、くれぐれもお気を付けください。

 

まとめ

母からメールが来た時には既に寝ていたので実際に知ったのは後日だったのと、病院に行く前に診察してみたところ五十肩にしては前述した疑問が残り、病院に行った後では後日MRIを撮って精密検査ということで、私なりに色々考察してみたところ

・腕が体ごと前屈してからなら挙がってしまう。

・自力で上げない限り痛くない。

・最初の段階で、肩関節より腕の前側に痛みがあった。

とこの様な違いから中々傷病名が確定できませんでした。

手術が終わり執刀医の先生が説明に来て頂いて意外なことが分かりました。

1.比較的まれな筋肉の腱板が断裂していたこと。

2.良く起こる筋肉の腱板も部分断裂を起こしていたこと。

何れもきちんと縫合して無事に手術は成功したのですが、1の腱板が断裂したことは未だに謎のままになっています。その理由は切れ方で、この腱板が切れることはまれだけに大きな力が加わった様な切れ方をしていたことで、母自身もやった記憶が無く執刀医も首をかしげていました。

肩こりに悩んでいる方も決してただの肩こりと思わず御相談ください。

また肩関節周りに痛みやゴキゴキ音がしたら当院へお尋ねください。