
メタボリックシンドロームについては皆さんよくご存じかと思いますが、ロコモティブシンドロームについてはどのくらい知っていますか?
最近になって「名前を聞いたことはあるけど・・・」という方は多いと思いますが、「メタボ」と似ているため何となく勘違いをして覚えてしまっている方もいらっしゃいます。
今回はロコモティブシンドロームについてお話ししていきます。
メタボは肥満、ロコモは・・・?
メタボリックシンドロームは別名【内臓脂肪症候群】と言いまして、40歳~74歳の男性2人に1人、女性5人に1人の割合いで予備軍合わせて1940万人と推定されています。
メタボの方
内臓脂肪による動脈硬化が促進
脳・心臓疾患の発症リスクが高い
肥満による、膝や腰への負担も増す
これらがロコモティブシンドロームの原因となります。
ロコモティブシンドロームとは?
「運動器症候群」といい、【肥満の方】でも【やせの方】でも起こる運動器の障害で、身体を動かす機能が落ちた状態を示します。
新型栄養失調に診られるような極端なダイエット、骨密度低下による痩せ、低栄養などで骨粗鬆症やサルコペニア(筋肉減弱症)となりロコモティブシンドロームへとつながります。
ロコモティブシンドロームの主な原因
日常生活における最大の原因は運動不足の生活習慣にあります。
メタボに該当する年齢からガクンと「体力が落ちたな」と感じた方は、まさに運動不足と言っても過言ではありません。
ウォーキングは【高齢者がやるもの】という概念から『ジムに通って筋肉着けてカッコよく!』と意気込むも、運動習慣にブランクがあるので『昔とった杵柄』でも体が追い付かなくなり、断念してしまいます。
高齢化社会において介護の原因は、運動器の障害が原因で要介護支援の1と2が全体の約半分を占めており、さらに脳血管障害による麻痺での運動器障害でも起こっています。
要介護支援の原因たる運動器障害の疾患を具体的に上げますと、
- 変形性膝関節症
- 骨粗鬆症
- 関節リウマチ
- 脊柱管狭窄症
- 骨折
- 四肢・体幹の麻痺
- 腰痛、肩こりなど
とされていて、いくつかは加齢に伴う運動機能低下によって起こっているのもあります。
関節リウマチは自己免疫疾患になりますので、専門の治療が必要です。
骨粗鬆症や骨折・腰痛・肩こりなどは、日ごろのウォーキングや軽いストレッチ体操から十分防ぐことが出来ます。
- 骨密度の低下はウォーキングで予防
- 脊柱管狭窄症は、発症から2年間歩くことで治すことが可能
- 変形性膝関節症は、屈伸などで太ももの筋力のバランスを整えると痛みは緩和していき、手術を回避できる場合もある
メタボ・ロコモの予防は食生活から
40代から筋肉は0.5~1%ずつ減っていきますので、適度な運動と栄養をとる習慣が予防に繋がります。
高齢者の方にお話を伺うと、お茶とおせんべいをよく食べている方が多いようですが、おせんべいはお米が原料ですので糖質が多く、血糖値が一気に上昇します。お茶のカフェインやおせんべいの塩分を摂りすぎますと、カルシウムの吸収を妨げてしまいます。
また、お肉の代わりにハムやソーセージを代わりに食べている方も多く、これら加工品に多く含まれるリン酸もカルシウムの吸収を妨げますので、食べやすい分摂りすぎないように気をつけましょう。
骨はビタミンDと組み合わせることで吸収が良いとされていますが、骨質を上げるにはビタミンKが必要です。ただし血液サラサラのお薬を飲んでいる方は要注意です。
高齢者の方も出来ればお肉を取るように心掛けて
卵やナチュラルチーズにもたんぱく質が多く含まれていますので、乳製品も含め色々組み合わせて取っていただくと良いでしょう。
特にたんぱく質はビタミンB6との組み合わせで筋肉になりますので、マグロの赤身、赤ピーマンやキウイフルーツなどにも多く含まれている食材と合わせて食べてみて下さい。
運動や外出をしなくなると・・・?
歩く機会が減りますので、お腹が減らなくなり負のスパイラルが起こります。
- 小腹を満たす間食でお腹いっぱいに
- 食事回数や食事量が段々と減る
- 食べなくなると、消化能力が低下
- 消化が落ちるので、重く感じるお肉や魚を食べる機会が減る
- たんぱく質やそれを筋肉や骨に変えてくれるビタミンや、ミネラルも取れなくなる
- 筋肉が痩せて固くなり、柔軟性を失う
- 日常生活で疲れる体になり、外出機会が減る
- 日光浴で摂れるビタミンDが不足し骨も痩せる
外へ出て歩くだけでも、負の連鎖を断ち切りビタミンが取れやすくなりますので、簡単な運動や食事習慣を見直してみましょう。
チェック法(ロコチェック)
よくテレビでやっている椅子から足の力だけで立ったり、片足を上げて立つことは筋力が落ちているとかなり危険ですので気を付けて行って下さい。
こちらのチェックは日常生活の出来事ですので、思い当たることが多いと思います。
1.片足立ちで靴下がはけない
2.家の中でつまづき(滑り)やすい
3.階段を上るとき、つい手すりに捕まる
4.やや重い仕事が困難
5.2kg程度買い物袋を持ち帰るのが困難(牛乳パック2本分)
6.15分くらい続けて歩けない
7.横断歩道を青信号のうちに渡り切れない
いずれかに1つでも該当すると予備軍ですが、数が多いほどロコモの心配が高まります。
予防体操(ロコトレ)
ロコチェックで該当しなかった方も暇つぶしにやっておくと足の筋肉がリラックスして浮腫みの解消にもなります。足の筋肉の落ちてる方に無理なく出来る体操です。
A.バランス能力-片足立ち
左右1分間ずつ、1日3回
やり方
転倒しない様に必ず掴まる物や壁などが有ると予防できます。
床に足が付かない程度に片足を上げます。
ポイント
姿勢は真っすぐにして行うようにしましょう。
支えが必要な人は十分注意して、机に手を添えて行いましょう。
指を着いただけでもできる方は、机に指先をついて行いましょう。
B.下肢筋力-スクワット
深呼吸するペース5~6回繰り返します。1日3回
やり方
1)肩幅よりやや広めに足を広げて立ちます。つま先は30度くらい開きます
2)膝がつま先より前に出ない。また膝が足の人差し指の方向に向くように身体を沈めます。
※スクワットが出来ない方へ
ダイニングテーブルなどに座り、机に手を着いて立ちすわりの動作繰り返してください。
机に手を着かなくて出来る場合はでも手をかざして行うとよいでしょう。
ポイント
動作中は息を止めずに行いましょう。
膝は90度以上曲げない様にしましょう。
太ももの前後の筋肉に力が入っているか意識しながらゆっくと行いましょう。
支えが必要な方は十分注意して机に手を着いて行います。
もう少しできそうな方には合わせてどうぞ
C. ふくらはぎの筋力アップ-ヒールレイズ
10~20回(できる範囲で)2~3セット
やり方
1)両足で立った状態で踵を上げて、つま先立ちになります。
2)ゆっくり降ろします。これを繰りかえします。
自身のない人は
壁などに手を着いて片足だけでも行ってみましょう
立位や歩行が不安定な方は、イスの背もたれなどに手を着いて行ってみましょう。
ポイント
バランスを崩しそうなら、壁や机などに手を着いて行いましょう。
踵を上げすぎると転びやすくなりますので、気を付けて行いましょう。
D. 下肢の柔軟性・バランス能力・筋力-フロントランジ
5~10回(できる範囲で)2~3セット
やり方
1)腰に両手をついて両足で立ちます。
2)足をゆっくり大きく前に踏み出します。
3)前に出した足の太ももが、水平になる様、腰を深く下げる。
4)身体を上げて、踏み出した足をもとに戻します。
5)反対の足を行います。
ポイント
上半身は胸を張って姿勢を維持します。
大きく踏みすぎて、バランスを失わないようにします。
CとDは出来る人が行って下さい。AとBだけでも、続けることで少しづつ筋力が養われます。
難しい運動がありましたら無理をなさらず、ウォーキングなどなじみのある体操などに切り替えてください。
やってみた感想とまとめ
Aの片足立ちは、意外とふらつきます。壁なりテーブルなり、手を着くところでやって下さい。1分間は長く感じますが疲れない長さです。
Bのスクワットですが、30代から40代前半の自信のある方は、スロートレーニングと思ってやっていただくと効果抜群です。
それ以外の方は、テーブルなどに手を添えてやっていただいた方が効果は高いと思います。
これは『姿勢とゆっくり』こそが効果の決め手になりますので、テーブルに手を添えて姿勢を整えた方が少ない回数で価値ある運動になります。
Cは意外とキチンと出来ない事に驚きです!両足を揃えてキチンとつま先立ちをして、一拍維持してゆっくり揃えて降ろす。
体が捻じれている方は、この行為はかなりバラつきます。
壁などに手を着いて行ったほうが、十分な効果を得られると思います。『両足揃えて』がポイントですね。
Dについては腰痛のある方にはかなり効果のある体操で、私自身かなりやっています。
腰痛持ちは足腰の筋力が低下していますので、必要以上にフラ付きますからすぐ何か掴まれるところで行って下さい。
本格的な筋トレをやられている方ほど、短い時間や少ない回数で効率よく筋肉を動かしていますので、1回1回を大切に行っています。
イメージとして持っている「ヘロヘロになっても追い込まれれる」トレーニングは100%続きません。
しっかり身体を休ませている時にこそ筋肉はついていきますので、これらの運動を行った際には【しっかり身体を休める習慣】も付けてください。
欧米と日本の格差
アメリカ社会では1980年代の調査でも、「健康のために何らかのエクササイズに携わっているか」という調査で、実に成人の85%の人が【YES】と答えていました。
自ら健康でいなければならないからこその生活習慣ですが、日本と真逆です。
日本の場合、1980年代に若者として謳歌してきた方が、今やロコモ対象者になっています。ロコモティブシンドロームは病気ではありませんが、進行すれば自ら行動範囲を狭めてしまいます。
そのほとんどは簡単な体操や、日ごろから行なっている『歩くこと』そして十分な睡眠が習慣になっていれば自然と予防できてしまいます。
ほんの少しの【すき間時間】を有効活用してみませんか?
当整骨院では日常生活における痛みの予防にも取り組んでいます。お気軽にご相談下さい。