日本では股関節の代表的なトラブルである変形性股関節症だけでも、治療を受けていない患者が400~500万人存在していると考えられています。つまり100人に3、4人は股関節に問題を抱えていることになるのです!

〇股関節痛があるとどうなるのか

まず、その痛みによって長い距離を歩くことが難しくなります。それにより活動的な生活が送れなくなることも少なくありません。

次第に自宅に閉じこもりがちになり、高齢の方であればボケや寝たきりつながることも…。

痛みが悪化すると、動かしていなくても膝に痛みを感じてしまうような状態にもなってしまいます。そうなってしまうと、うつ病などの精神的な不調を引き起こす可能性もあります。

このように、股関節痛は私たちの生活全体を暗くしてしまう恐ろしいものなのです。

 

〇股関節とは

皆さんご存知の通り、骨盤と脚をつなげている関節のことをいいます。

その構造は、骨盤側に「寛骨臼(寛骨臼)」というくぼみがあり、脚の骨側にある「大腿骨頭」という球状の部分がそこへはまるようにくっついているのです。このくっついている部分は滑膜という膜や関節包という組織で包み込まれて完全に密閉されており、軟骨と軟骨の間のすき間は少しヌルヌルした液体で満たされています。

特徴的なのはその大きさで、単体では人体最大の関節です!

 

〇軟骨がすり減るって?

股関節痛の原因となるものは「変形性股関節症」がほとんどです。

これは、加齢や日常生活における負荷などによって、次第に股関節の関節軟骨がすり減っていき、最終的には骨そのものが変形していく病気です。また、徐々に進行していく病気なので、痛みを我慢した生活を続けていても劇的な改善が起こることは期待できません。

「変形性股関節症」の進行の仕方を簡単にまとめると

初期段階━何らかの原因によって軟骨が部分的に傷つき、削れる。

進行期段階━軟骨がさらに削られ、部分的に骨と骨が直接接触する。

末期段階━軟骨がほとんどなくなってしまい、骨と骨が完全にぶつかり合う。

痛みは初期段階から感じ始めますが、安静にして炎症がおさまれば痛みもおさまるので、この段階で医師の診察を受ける方はほとんどいません。

初期段階の痛みを我慢していると、次第に進行期段階へと移行します。この段階になると、ほとんどのケースで強い痛みを慢性的に感じるようになり、立ったり歩いたりすることが難しくなります。

それでも痛みを我慢し続けるとついに末期段階へ…。ここまで来てしまうと、さらに強い痛みを感じるようになり、骨同士がぶつかり合って削れることで外見からも脚の長さが短くなっていると分かるまでになってしまいます。

また、あまりに長期間治療せずにいると骨と骨がくっついてしまい、関節の動きがかなり制限されるため、逆に痛みを感じなくなる事もあります。ただしこの場合には股関節が固まってしまっているわけですので、もはや正常な働きをしてくれません。

 

〇日本人は「二次性の変形性股関節症」になりやすい?

さて、さきほど変形性股関節症の経過について説明しましたが、じつはこの病気の発症要因には二種類あるのです。

一次性

加齢や肥満などが主な原因になるとみられるものの、病気を引き起こす要因がはっきりしないもの。

二次性

ある程度、発症要因が特定できるものです。

海外では、一次性のものが多い国がほとんどですが、日本では二次性のものがなんと8割以上を占めているのです!そしてその多くは女性です。

なぜ日本人は二次性のものが多いのかというと、それは遺伝的な要因が大きく関わっています。

 

〇日本人には生まれつき「臼蓋形成不全(きゅうがいけいせいふぜん)」を抱えている人が多い

二次性の変形性股関節症で最も代表的なものはこの臼蓋形成不全です。

これは、股関節の骨盤側で大腿骨頭を受け止める寛骨臼の上側の部分、つまり「覆い」の部分が生まれつき浅い状態のことを指します。これによって、関節のほかの箇所に負荷が集中しやすく、たとえ痛みは無くても軟骨や骨を痛めやすいといった問題が起きてしまいます。

画像参照:メディカルノート

若いうちは問題が無くても、40~50代になったときにそれまで蓄積してきたダメージが現れて変形性股関節症を発症してしまう、というパターンが一般的です。そのため、臼蓋形成不全は変形性股関節症の「前段階」または「前期」とされます。

また、臼蓋形成不全は女性が発症することが多いのですが、その理由はハッキリとは解明されていません。生活習慣が関与している側面などもありますが、おそらく、遺伝子の染色体が関わっていると現時点では考えられています。

何はともあれ、日本人、特に女性は日頃から変形性股関節症に気を付けなければならないのです。

 

〇ケガなどによる急性の股関節痛はきちんと治療することで痛まなくなる

外部から強い衝撃を受けた際に、組織の内部で筋肉や血管に損傷が生じたものを「挫傷」と呼びます。いわゆる「打撲」です。これが股関節付近で起これば当然股関節痛につながるのです。

また、慣れない運動をした際に起こる「筋肉痛」、激しい運動で筋線維を大きく傷つけてしまう「肉離れ」なども急性の股関節痛の原因になります。

一方、筋肉ではなく関節それ自体を一時的に痛めるケースもあります。例えば、関節が可動域を超える無理な運動をしたことが原因で起こる「捻挫」や「脱臼」「亜脱臼」などです。

これらによって関節軟骨が傷つけられたり、関節を包んでいる関節包や靭帯がダメージを受けたりします。そのため強い痛みを感じる場合もありますが、きちんと治療をすれば治るものばかりなのです。